六甲アイランドは人がいないのか?―― 設計された街の読み方 ――

コラム

六甲アイランドの駅前の静けさ

リバーモールを歩いていると、

駅前なのに、ずいぶん静かだなと感じることがあります。

「ここ、本当に人口1万9千人もいる街なんだろうか」

住んでいる自分でさえ、

時間帯によってはそんなふうに思うことがあります。

実際に六甲アイランドは、しばしば

「人がいない街」

「寂れている人工島」

といった言葉で語られます。

駅前が静かで、商業施設が目立たず、

休日でも人の密度が高く見えない。

そうした風景だけを切り取れば、

そう感じる人がいるのも無理はありません。

ただし、ここで一つ、重要な前提があります。

六甲アイランドは、自然発生した街ではありません。

最初から明確な意図をもって設計された、計画都市です。

この前提を外したまま読むと、

六甲アイランドは読み間違えられやすい街です。

アイランドセンター駅近くの通路(リバーモール)を見ると、通路というより広場という方がしっくりくる広さであることがわかります。

六甲アイランドは「人を一か所に集めることを前提としない」構造をもつ街

多くの街は、自然発生的に成長してきました。

駅前に商業が集まり、

人が集まり、

にぎわいが生まれ、

それが「活気」として評価される。

私たちは無意識のうちに、

そういった感覚で街を見ています。

しかし六甲アイランドは違います。

ここでは、

商業が街の表情の主役として前面に出るのではなく

人の流れが一か所に集中しなくても成り立つよう

暮らしが住宅エリアごとに分散する構造が採られています。

だから、駅前に立っても

「人が集まっている感じ」がしない。

それは衰退ではなく、

そう見えやすい構造になっているだけです。

人はどこにいるのか

六甲アイランドの人口は約1万9千人。

決して無人の街ではありません。

小学校は私立を含めて3校あり、

最も大きな向洋小学校で児童数は900人規模。

3校合わせると六甲アイランドの小学生人口比率は約8%。

全国平均(約5%)を大きく上回っています。

では、その人たちはどこにいるのか。

答えはシンプルです。

住宅エリア(街区)に分散しています。

六甲アイランドでは、

アイランドセンター駅を中心に、

放射状に住宅エリアが配置されています。

それぞれの住宅エリアの近くに公園があり、

子どもはそこで遊び、

大人はそこで生活する。

人が一箇所に集まる必要がない構造です。

年に数回のイベント時はこのようにリバーモールに人が集まります。

駅前が静かに見える理由

アイランドセンター駅の周辺には、

リバーモールという通路と広場を兼ねたような空間があります。

時間帯によっては、

子どもたちが走り回り、

親が少し離れた場所からそれを見守っている光景もよく見かけます。

ただし、学校のある時間帯や平日の昼間は、

当然ながら人は少ない。

ここでも、

「常に人がいる駅前」を期待すると、

肩透かしを食らいます。

六甲アイランドの駅前は、

常時にぎわいを生むことを目的とした空間ではなく、

生活の中で必要な時間にだけ使われる場所として位置づけられています。

商業が「見えない」構造

六甲アイランドには商業施設があります。

ただし、それが外からは分かりにくい。

例えばリバーモールエリアには、

リバーモールウエストとイースト、二つの商業エリアがありますが、

多くの店舗はリバーモール側に正面を向けていません。

入り口は内側を向き、

リバーモールからは「裏町」のように見える。

これは、都市構造の結果としてそう見える配置になっています。

リバーモールは、

商業の視認性によって人を留める場所というより、

生活動線の中で人が通り、必要に応じて滞在する空間として構成されています。

店は拡散されるための存在ではなく、

地域の中で共有される存在。

だから大型チェーンは少なく、

小さな飲食店が点在する形になっています。

リバーモールウエストの様子。このように通路側に入り口を設けるのではなく内側に入り口を設けリバーモール側から目立たない設計となっています。

また、

シェラトンスクエア、ファッションプラザ、ファッションマートなど、

商業機能の多くは屋内に収められています。

外から見ると「何もない」ように見えるのは、

商業が隠されているからです。

リバーモールイーストにある飲食店。こちらは入り口が通路側を向いていますが、通路からは段差で緩やかに分断されており、背景に組み込まれたような建築となっており、あまり店舗部分が全面に出ない構造になっているのがわかります。
シェラトンスクエアからROKKO i PARKへのモールも内側に店舗がある構造となっています。

バブル期からのズレと現在も残る設計意図

かつての六甲アイランドは、

今よりもずっと大きな未来を想定していました。

日本の多くの街がそうであるように、そのバブル時代の規模を、現在もそのまま維持することはできていません。

過剰な大きさの建物が残り、

使われていないエリアがあるのも事実です。

その点では、

バブル期と同じ姿ではありません。

ただし、

街の根幹にある設計思想は今も機能しています。

  • 歩車分離
  • 見通しの良い動線
  • 人を分散させる住宅配置

これらは、特に「子育てのしやすさ」という変わらない価値観として強く生きています。

六甲アイランドをどう読むか

六甲アイランドは、

自然発生した街と同じ文脈で読むと、必ず誤解されます。

駅前のにぎわいで測る街ではない。

商業の派手さで評価する街でもない。

ここは、

人が集まる街ではなく、

人が分散して、安心して暮らすための街です。

その読み方に切り替えたとき、

「人がいない街」は、

「人が前に出ない街」へと、見え方を変えます。

駅前の静けさを見るたびに、「六甲アイランドは、こういう街なんだ」と思います。

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